空の国から /多間環

1章 – ひとりの空 –

今はお昼の三時半。
原っぱにはゆう子ひとりです。

先月五歳になったばかりのゆう子は、何もかもが面白くありませんでした。
大好きなお母さんは弟が生まれるために、数日前からお家にいません。
高齢出産なので、身体がしんどいのだそうです。
一日に一度お電話があるだけで、何だかゆう子が忘れられたみたいでつまらないのです。
足下の草を抜きながら、ずる休みしたピアノの先生の怖い顔を思い出して、
またため息をついてしまいます。

ぼんやり空を見上げると、白い雲がたくさん浮かんでいました。
ふと気づくと、白い雲の一つがどんどんゆう子の方へ近づいてきます。
近づいてきた雲は、白いワンピースを着た女の子でした。

ゆう子と同い年くらいでしょうか。女の子は言いました。

「ゆう子ちゃん、私あなたに会いにきたの。一緒に遊びましょう。」

ゆう子はビックリしました。どうして名前を知っているのでしょう。

「あなたはだあれ?」

ゆう子は聞いてみました。

女の子は一瞬考えてから、
「お姉ちゃん。お姉ちゃんと呼んで」と答えました。

ゆう子は不思議だなあと思いながらも、

「お姉ちゃん!」

と呼んでみました。
すると、女の子はそれはそれは嬉しそうな笑顔になり、
ゆう子の両手をとって空に浮かび上がりました。

「ゆう子ちゃん、一緒に空の国で遊ぼう!」

ゆう子も何だか楽しくなって、「うん!」と一緒に空高く上がっていきました。

 
  * * *
 
////////// 目次 //////////

1章 – ひとりの空 –
2章 – 空の国 –
3章 – 空の神様 –
4章 – 約束 –
5章 – 五人の空 –