試し読み

人魚の燭 /山本紗由

昔、蝋燭屋の青年が月明かりの美しい晩に、 浜辺で傷ついた人魚を拾いました。 其の村では人魚は災いを呼ぶ 不吉なものとされていましたが、 青年はその人魚の美しさに魅せられて、 こっそりと家に連れ帰り看病したのです。 水にぬ … 続きを読む

空の国から /多間環

1章 – ひとりの空 – 今はお昼の三時半。 原っぱにはゆう子ひとりです。 先月五歳になったばかりのゆう子は、何もかもが面白くありませんでした。 大好きなお母さんは弟が生まれるために、数日前からお … 続きを読む

さえずり詩集 /多間環

- 詩 - 「友」 友は旅に出て 私はひとり ここに残る 私の心のさざなみは 旅先の友の海に続いている   友は旅から帰らず 私はひとり ここに残る 私の心の夕凪は 旅先の友の空に続いている   // … 続きを読む

緋色の箱 / 多間 環

昔々、あるところに小さい姫がおりました。   ある日、小さい姫がお父様から緋色の箱をいただきました。 「姫と同じ緋色の箱だよ。姫が一番欲しいものが入っているよ。」 お父様はそう言って、姫に箱を渡しました。 姫はとても喜ん … 続きを読む

緋箱物語 / 山本紗由

これは、遥かなる遠い昔の、何処かの御伽噺です。 とある山の麓の小さな村に 美しいイオという名の娘がおりました。 イオの長い黒髪は、濡れた鴉の羽のようにしっとりと輝き、 白い肌はまだ誰にも踏み荒らされていない初雪のよう。 … 続きを読む